認知症や知的障害で判断能力が十分でない人を支える制度に、「成年後見制度」があります。
成年後見制度とは、認知症や知的、精神障害などで判断能力が不十分な人を弁護士や司法書士、福祉関係者、親族らが支援する制度で、2000年に導入されました。本人に代わって預貯金の管理や福祉サービスの利用手続きなどをするほか、日常生活の見守りも担います。本人の判断能力が低い順に、後見、補佐、補助の3類型があり、本人や家族らが利用を申し立てて、家庭裁判所が後見人を選びます。以前は親族が務める例が多かったのですが、現在は弁護士など専門職が約8割を占めます。
中日新聞2022年8月13日参照
現在、国内には、推計約600万人の認知症と、118万人の知的障害の人がいますが、その内、成年後見制度を利用している人は、約24万人と伸び悩んでいます。
その理由として
- 利用を始めたら、途中で後見人を替えるのがむつかしい
- 必要なくなっても、原則、利用をやめられない
- 後見人に報酬を支払い続けなければならず、経済的に負担
- 報酬額に明確な基準なく、いくらかかるか分かりにくい
- 本人や家族の意思を尊重しない後見人がいる
などがあげられます。
実際に利用している人の8割が、制度に「問題がある」と感じています。
そこで利用を促進するために、法務省が民法改正に向けた検討を始めることになりました。
たとえば、以下のような改革を想定しています。
- 必要なときだけ利用、利用をやめることができるようにする
- 後見人の交代も可能にする
- いくらかかるか分かりにくい報酬額の仕組みを改める
ただ、民法は法務省、制度の運用は最高裁判所、利用促進は厚生労働省と所轄がまたがっており、役所間の調整や、地域福祉との連携など、論点は多岐にわたります。
後見制度の利用をやめたとき、だれがどう利用者を支援するのか、利用者に財産がない場合、後見人への報酬は公費から出すのか?など多くの調整も必要となります。
議論は始まったばかり。
改正案は早くても26年度の国会に提出される見通しです。
成年後見制度については、厚生労働省のサイト「成年後見制度とは?」をご参照いただけたら幸いです。